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20 晴れすぎた空 (アローナ&クロナ)


written by 朝川 椛

晴天。

雲一つない完璧なまでの青空を見て、アローナは唸った。

「もう嫌。まったくもってむかつくわ!」

自宅の庭先。

木製の丸テーブルにはスポンジケーキが置かれている。

「もう少し人の気持ちを察して欲しいものだわ!」

腹立ち紛れに手にした泡立て器をぶんぶん振り回すと、

隣で食材集を読んでいたクロナが顔を上げた。

「どうしたのさ、アローナ? らしくないね」

空は青空が一番って言ってなかったっけ、

とおかしげに笑うクロナに、アローナは頬を膨らましてみせる。

「どうもこうもないわよ。こんなに晴れてたんじゃ、

せっかくのイメージが台無しだわ!」

ぐっと拳を握り締め力説するアローナを見て、クロナが首を傾げる。

「例の写実的デコレーションってやつ? 今回はどんなのなの?」

「『青空にうっすら伸びた雲』のような柔らかさの

ホイップクリームよ」

アローナが夢見るようにうっとりしながら答えると、

クロナもそれはいいね、と熱心に首を縦に振った。

「でしょ! 今日のスポンジにはこれしかないわよね!」

口元を綻ばせ同意を求めるアローナに、

クロナも満面の笑みで頷き、でも、と付け加える。

「今日は多分、そういう雲はかからないと思うけどね」

「そうなのよ! まったく腹立つわ!」

でも取りあえず待つけど、と腕を組んでふんぞり返るアローナ。

へえ、と相槌を打ったクロナが、

ふとその動きを止めてこちらの様子を窺うように尋ねた。

「一つ確認したいんだけど」

「何?」

「雲が出なかったら、そのケーキどうするの?」

クロナの問いに、アローナは驚きで目を瞬く。

「もちろん食べるのよ、いつも通り」

当然じゃないかという意味を込めて答えると、

クロナは少しだけ胡乱な目つきをして、こちらを見つめてきた。

「またプレーンで。ちなみに今日は誰が?」

「それはもちろん、貴方とわたしが」

「また俺も? 確かこの前これで最後だからって、

5個くらいホールでそういうケーキ食べさせられた気が

するんだけどな……」

微笑むクロナの瞳は少しも笑っていない。

けれど、アローナはお構いなしに宣言した。

「うん。だから願っててね? 空に雲がかかること」

形ばかりの笑みを貼りつかせたまま固まるクロナ。

その様子が少し気の毒に思えたけれど、

すべては夢のためだから仕方がない。

「雲、早く出てこないかな」

犠牲を省みている暇はない。

この幸せを守り夢を叶えるためならば、

一切の妥協も捨てさらなければ。

そう。すべてはあの人のような菓子職人になるために。

「わたしは絶対、プリンド大陸一の菓子職人になってみせる!」

アローナは、こめかみに手をやり頭を振るクロナをよそに

澄み切った青空を見上げながら、固く心に誓うのだった。

fin.
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28 向日葵 (アローナ&クロナ)


written by 朝川 椛

「なぁにしてんの?」

と声をかけながら、アローナはクロナからその便箋を抜き取った。

「あっ!」

「手紙?」

「返してよ! アローナ!!」

アローナは、便箋を取り返そうとつかみかかってくるクロナを

ひょいとかわしながら、文面に目を走らせる。

「えーっと、なになに? 

『貴女をずっと見ていました。

貴女のその向日葵のような明るく優しい微笑みを見ているだけで、

私の心は天にも昇る気持ちです』と……」

「うわあああ!」

読み上げるアローナに

クロナが首まで赤くして叫び、その手から便箋をもぎ取った。

「勝手に読まないでよ!」

「あんた好きな子いたんだ?」

にんまりしてからかうアローナに、クロナがそっぽを向いて呟く。

「……けないだろ……」

「は?」

「いるわけないだろ!」

クロナの言葉にアローナは目を瞬かせた。

「じゃあ何で書いてんのよ?」

「そんなの決まってるじゃん。予行演習だよ」

「空想ってこと?」

アローナは半眼で問う。

するとクロナはうっとりとした表情を浮かべ空を見上げた。

「そう。いつかどこかで出会えるその人のために、さ」

「『向日葵』みたいな?」

「うんそう。『向日葵』みたいな。

明るいけど太陽を追いかけるとこが健気な感じじゃない?」

アローナはしばし無言で従弟の顔を見つめていたが、

やがて深い溜め息をついた。

「いい? 向日葵はね、

別に太陽を追っかけてなんていないのよ? 

それは時間帯でそう見えるだけでさ」

そんな、と声を上げるクロナに常識よ、と肩を竦める。

「『向日葵』なんて全然健気じゃないわよ。

わたしほど健気な生物がこの世にあるわけないんだから」

「……それたぶん、本気で言ってるんだよね……」

引きつった笑いを浮かべるクロナをよそに、

アローナは悲痛な心持ちで憧れの菓子職人の名をそっと呟いた。

(きっときっと、貴女のいる高みに追いついてみせます……)

この思いは絶対だから、向日葵なんかに負けられない。

アローナは拳を握り締め、決意を新たにするのだった。

fin.

36 居場所 (アローナ&クロナ)

written by 朝川 椛

「アローナはさあ〜」

クロナは食材集に目を落としたそのままで、

アローナへ問いかけた。

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44 約束 (アローナ&クロナ)


written by 朝川 椛

「まずいわね」

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54 永遠 (アローナ&クロナ)

written by 朝川 椛

アローナは激怒した。

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やどりぎ

Author:やどりぎ
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こちらはオリジナル小説
サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの
朝川 椛(あさかわもみじ)
と高木 一(たかぎはじめ)の
2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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