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20 刀(剣) (稲村ふみ)

written by 高木一

 想田家では年に何度か蔵の空気を入れ替える。中に収めてある物を出すことがほとんどなかったため、蔵の中に何が入っているのかふみは知らなかった。それは自分が仕えている麻紘も同じだったようで。蔵の中を見たいと、庭を散策しているときに言われたのが今回の虫干しのきっかけだった。

「お嬢様、中は物で狭くなっておりますから、お気をつけくださいませね。ふみのそばを離れてはなりませんよ」
「はぁーい!」

 小さな手を挙げ元気よく返事をする麻紘に、ふみは眦を下げた。

(まだ数えで五歳になったばかりですが、お嬢様はとても利発でいらっしゃる)
「わぁ、これなんだろう?」

 麻紘が手を伸ばす。麻紘の視線の先には、紅梅や白梅といった小花が散りばめられた懐剣(かいけん)があった。きっと見た目の可憐さに触れたくなったのだろう。ふみは危険なものがあるかもしれないと説明し忘れていた自分の思慮のなさを反省つつ急いで止めに入る。

「お嬢様危のうございます。触れてはなりません」
「危ないの?」
「これは懐剣と言いまして、嫁入り道具の一つなのですよ」
「懐剣? 剣なのこれ?」
「懐刀とも護り刀とも呼ばれるものでございます。きっと想田家へ嫁入りしたどなたかの物でしょう」
「そうなんだ。あ! あれは何? 書物のようだけど」

 説明を聞き終えると懐剣への興味はなくなったようだ。ふみは麻紘の切り替わりの早さに苦笑しながらも、刃を見せずに済んだことを安堵した。 

〈了〉

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