05 翼 (高松悟)

 鳥になりたい。

 空を見上げるたびにそう言っていたのは、

高校の同級生で遠縁の男、梅畑雅秋だった。


 随分ロマンチストな奴だ、と思っていたけれど、

どうやらそうではなかったらしい。

「あんなに野心家だったとはな」

 高松悟(たかまつさとる)は高層ビルの窓辺から空を眺めながら、

かつてのクラスメイトを思い出し片頬を上げる。

「まあ、俺も人のことは言えないが」

 それでも、奴よりはまだましだ。

自分は黄梅市を開かれた土地に戻したいだけだが、雅秋は違う。

それでも、あの土地を出て東郷都の職員になると決めた時、

奴に言われた言葉が未だ胸に焼きついていた。

『黄梅を出て別の籠に囲われるのか。

お前なら鳥になって自由に空を飛びまわれる奴だと思っていたのに』

 心底落胆したように告げられて、悟は咄嗟に声を詰まらせた。

今の現状に不満はない。雅秋にも野心があるように、

自分には自分の思いがあるからだ。

「俺は俺だ」

 翼なんかいらない。

 遠くへ飛びたいわけではないのだから。

 悟は黒い角ばった眼鏡のフレームを直すと、

窓から視線を外し今日の業務に戻った。

                           fin.
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Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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