08 空 (鶯木麗)

 鶯木麗(おおきうらら)は、久しぶりに友人、

小宮(こみや)タマの家を訪ねていた。

 こちらの顔を見るなり「お茶の用意をしてくるから」と言われ、

麗は縁側で日向ぼっこをしながら彼女を待っている。

 心地よい風が、麗の茶緑色の短い髪を揺らした。

空を見上げると、柔らかそうな雲が1つあるだけだ。

「こんなに良い天気だと、飛びたくなるわねー」

 良い天気の時は特にそう思う。

鳥としての本能がどうしても出てしまうのだ。

「今日は、飛んで帰ろうかしら」

 人型を解いて獣の姿になれば、自由に飛べるのだから。

だが、麗の考えに反対する声が聞こえてきた。

「ダメよ、麗ちゃん。今日はこの後、一雨来そうよ。
なんだか顔がムズムズするもの」

 猫の獣人であるタマが、表情筋を動かしながら

お茶とお菓子をお盆に乗せてこちらへやってきた。

「あら、そうなの? せっかくの梅雨の晴れ間なのにねー」

 タマから急いでお盆を受けとると、

猫が顔を洗うように彼女も顔を手でなで始める。

しばらくして落ち着いたのか、

タマがお菓子の袋を開けながら声をかけてきた。

「こんな日は家でまったりするのが一番よ」

(それもいいかもしれないわね)

 こちらに向けてきたタマの柔らかな微笑みに、

麗も「そうね」と笑い返した。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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