14 戒め (狼谷朔太郎)

 狼谷朔太郎(かみやさくたろう)の眼前には、

口を尖らせ、ふてくされているような孫の姿があった。

「満」

 部屋へ呼びだした理由を説明しようとしたが、

それは呼びだした相手によって遮られてしまう。

「人間と共存していくための努力をしろってことなら、お断りだ。 
俺は人間と共存していこうとは思ってない」

 淡々と話す満に、朔太郎は眉間に皺を寄せる。

「お前は、長(おさ)見習いで何を学んできたんだ!」

 怒鳴りつけるこちらに対し満は、怯むことなく、

むしろ冷ややかともいえる視線向けてきた。

「黄金梅の恩恵によって栄えることのできた黄梅に住む、
人間や獣人を含んだ全ての生物同士が共存できるように
尽力していくこと。
また、黄金梅をもたらしてくれた太郎様の一族に敬意を払うこと」

「わかっているではないか」

 意外にも満は、自分が教えてきたことをちゃんと覚えていたようだ。

朔太郎は、そんな孫に驚きつつも感心し、先ほどの怒りを鎮めようとする。

しかし、今度は満の方が怒りをあらわにしてきた。

「冗談じゃねー。何が人間に敬意だ。
自分勝手に山を崩し、俺たちの土地を、仲間を傷つける人間どもと
共存なんて誰がするかよっ」

 満の本音に、朔太郎は胸が痛くなった。

朔太郎自身も、人間のせいで失ったものがたくさんある。

だが、それ以上に与えられたものもたくさんあった。

それを言ったところで、今の満が聞く耳を持つかどうか。

朔太郎が思案していると、満が先に口を開いた。

「俺は長だ。
もう長見習いのときのように、じい様の言いつけに従う義務はない」

 話すことはないと言わんばかりに、

満はそのまま部屋から出て行こうとする。

朔太郎は、満を呼び止めることができず、

部屋を出て行く孫の背中を黙って見ていた。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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