20 傷 (野臥間邦夫)

「イテテテ、年は取りたくないのぉ」

 膝をさすりながら邦夫は、どっこいせ、と座布団に座る。

昔、ケガをした後遺症のせいか、

足を曲げたりするといつも痛む。

痛みがひいてきたところで、タイミングよくふすまが開いた。

「じぃちゃん。母ちゃんが、お茶を持ってけって」

 足でふすまを開けて入ってくる孫の里夫(りお)に

苦笑していると、甘い匂いが鼻をくすぐった。

「ありがとうよ、里夫。ときにお前さん、
何かいい匂いがするが、その手に持ってるのはなんだい?」

「じぃちゃんの鼻には敵わないなー。はい、お裾分け」

 人差し指で鼻の下をこすりながら、

里夫が左手で隠し持っていたスイートポテトを渡してくれた。

「また、山を降りたのかい?」

 最近、人間の子供と知り合ったようで。

里夫は頻繁に山を降りているらしい。

昔に比べ人間との仲が良くない今、何かあってはと思い、

当初は諌めてみたものの孫には通じていないようだった。

(まあ、知恵が回る子だから大丈夫だろう。それに自分も……)

 邦夫は、かつて自分も人間の友と語らいあったことを

思い出しながら、手の中にあるスイートポテトを頬張った。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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