21 宣告 (文兎)

「お前って、とことんつまらない奴だよな」 

 大学時代の友人、里中信人(さとなかのぶと)が

しみじみと呟いた。

大型マーケットの片隅にあるカフェで、

作家業の信人にとりとめのない愚痴をこぼしていたのだが。

もはや慣習のようになってしまっているそれに、

いいかげん嫌気がさしたのだろうか。

 腕組をする友人の顔色を窺うと、信人はにやりと片頬をあげる。

「あんまりみのりお嬢様についてあれこれ思い悩みすぎると、

そのうち大変なことになるぞ」

「そんなこと!」

 信人の言葉に、文兎は鼻を鳴らした。

「監視されてることはとっくに承知してるさ」

 渋面を作って答えると、ちがうって、と信人が声を低めた。

「お前、最近薄くなってきてるぞ」

 自身の後頭部を指さしながら告げてくる友人を前に、

文兎は硬直する。

(は、禿げ……?)

 そんなことはない、とかぶりを振るも、

みるみる内に身体の体温が奪われていく。

「は、はは。そ、そんなばかな!」

「さあな~」

 あとで鏡で確認してみろよ、

としたり顔でコーヒーを飲み干す友人の声を遠くに聞きながら、

文兎は一直線にトイレへと駆け込んだ。

                            fin.
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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