23 薔薇 (悟)

 仕事帰り、小さな花屋のまえで

部下の澤井良樹(さわいよしき)を見かけた。


声をかけようかと思ったが、

深妙な面持ちで店員に何事かを告げているその姿を見て、

思い留まる。

それでも何だか様子が気にかかりその場で様子を窺っていると、

しばらくして店員が小さな薔薇の花束を抱えてやってきた。

「こんな感じでよろしいでしょうか?」

 花束を見せながら店員が微笑む。

「はい、大丈夫……だと思います」

 澤井がぎこちなく頷くと、店員が小さく首をかしげた。

「うまくいくといいですね」

「はい、がんばります……」

 何度も頷く澤井を微笑ましげに見つめる店員の言葉尻りに、

悟は彼が今日これから何をしにいくのかを悟った。

(ブロポーズか? それとも告白か?)

 どちらにしても、澤井の人生にとっては重大なことに違いない。

「薔薇のプレゼントねえ……」

 去っていく澤井の後ろ姿を眺めながら、

自分だったらどうするだろう、としばし考えるが。

「よくわからん」

 ちらりと脳裏を掠めたもう一人の部下のことを

無理やり頭から振り落とし、悟は駅へと急いだ。

                             fin.
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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