34 慈愛 (梅宮忠臣)

 一族の定例会が終わり、

後片付けに残っていた忠臣の元へ小太りの男が近づいてくる。

しかし、目の前で薄くなった髪の毛を

仕切りになでている男のことを自分は全く記憶していなかった。

きっと名前を覚える必要もない分家の誰かなのだろう。

忠臣は内心で苦笑しながら、外交向けの笑みを貼りつけた。

「忠臣様、本日はお疲れ様でございました」

「こちらこそ、滞りなく済んで」

「いやー、それにしても、
美都子様の慈愛に満ちたご尊顔を見られただけで、
寿命が延びた気がいたしましたなー」

 こちらの言葉を遮るように、売ってきた媚び。

それに忠臣は、眉をピクリと動かした。

しかし、前にいる男は気づいていないようだ。

あいも変わらず、嘘くさいおべんちゃらを言い続けている。

(ふむ、低能な分家が多いのも困ったものですね)

 そう思いつつも、

扱いやすいからそれでいいのかもしれない、と考え直す。

(まぁ、親に(本家)に反抗しようとしている
子供(分家)も出てきましたしね)

 そろそろ義理は果たしただろう。

まだ話続けている男を置いて、忠臣はその場をあとにした。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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