35 人形 (悟)

 「何だい? これは?」

 室長室に置かれたうさぎのぬいぐるみを見て、

悟は首をかしげた。

「女子社員一同からのものです。

バレンタインデーということで、男性陣に配っているそうですよ」

 報告に来ていた加藤直仁(かとうなおひと)が説明してくる。

「そうか。……それにしてもうさぎとはね」

 ぬいぐるみを手にとり苦笑していると、加藤も微笑む。

「一応それぞれをイメージしてのことらしいですよ。

ちなみに、僕は犬でした」

「なるほど……」

 自分は女性たちにうさぎのようだと思われているのだろうか。

まじまじとぬいぐるみを見つめる。

すると、こちらの意図を悟ったのか、

去り際に加藤がさりげなく一言付け加えてきた。

「いつも寝不足で目が赤くなっているからみたいですよ、室長。

少し身体のほうもご自愛なさってください」

「ああ、そういうことか」

 ありがとう、と加藤へ告げる。

「それは女子に言ってあげてくださいよ」

 笑顔で告げて一礼し去っていく加藤に、悟はああ、と頷いた。

「少し、睡眠時間を増やしてみるかな」

 誰もいなくなった室長室でひとりごちる。

来月のホワイトデーには自分も洒落を込めてみようか。

などと考えながら、悟はぬいぐるみを置いて書類に目を落とした。

                             fin.
 
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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