39 共鳴 (文兎)

「やあ」

 駅近くの書店で声をかけてきたのは、

梅畑の次男、雅仲だった。

「ご無沙汰しております」

 姿勢を正して軽く会釈すると、雅仲は手を振ってくる。

「やめてもらえないかな。年齢もほとんど一緒なんだし」

「いや、しかし、そういうわけには……」

 言いかけて、雅仲が手にしている本に目がいった。

「それは?」

「ああ。好きなんだ、これ。新刊の発売日だったもんでね」

 文兎は瞬きをして本を見る。

それは一冊のコミックで、江戸時代を題材にした人気作品だった。

「梅森君は……、あんまりコミックには興味ないかな?」

 決まり悪げに微笑む雅仲に対し、首を横に振る。

「実は私も集めてまして」
 
 雑誌の間に挟んでいた新刊本を出して見せると、

雅仲が嬉しげに叫んだ。

「そうだったのかあ! これは奇遇だねえ!」

 腕を軽くたたいてくる雅仲に、文兎も興奮して大きく頷く。

「本当にそうですねえ!」

 こんなところで同類に会えるとは思わなかった。

せっかくだから一緒に昼食でも、と誘ってくる雅仲に頷く。

連れだってレジへ向かいながら、文兎は小さな喜びを噛みしめた。


                             fin.
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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