50 天使 (狼谷朔太郎)

 家に帰る道すがら、

朔太郎の足元に薄茶色の毛玉がぶつかってきた。

「おいちゃん、ごめんね」

 毛玉の正体は、まだ人型に慣れていない村の子供だった。

見下ろしているこちらに怯えているのか、

尻尾を股の中に隠している。

舌足らずな口で必死にあやまってくる姿に、

自然と目尻が下がる。

「ちゃんと、あやまれてエラいぞ」

 柔らかい産毛の残る頭をなでてやると、

嬉しそうに尻尾が揺れる。

(このくらいの頃が一番可愛いのぅ。
 アレも昔は天使に見紛うほど可愛かったのに……)

 朔太郎は、最近口を開くたびに口論となってしまう

満のことを思い出した。

(今はアレのことを考えるだけで胃が痛くなるわい)

 しばらくの間だけでも、孫のことは頭から追いやろう。

朔太郎は、気持ちよさそうに目をつむっている

子供の肌触りのよい毛をなでて癒されることにした。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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