51 螺旋 (文兎)

「文兎、ちょうどよかったわ。お水をくんできてちょうだい」

 母の陽菜に告げられ、

言われるままにまいまいず井戸へ向かった。

螺旋状に続くあぜ道を歩きながら、

最初にこの井戸を求めた先祖たちの苦労を思う。

「うずまきっていうか、蟻地獄っていうか……」

 それだけこの地域に水がなかったということなのだろうが。

「よく考えたもんだよなあ」

 しみじみと呟きながら、現れた小さな井戸で水をくむ。

こんな習慣が残っているのも、もう黄梅市以外にはないだろう。

それを思うと、なんとなく恥ずかしく、同時に誇らしい。

「あちらではどうなんだろう?」

 都心に出ていった同級生の暮らしを思いながら、

文兎は来た道をゆっくりと戻っていった。

                            fin.



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メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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