55 陽だまり (雅秋)

 午後、束の間できた休みを満喫するべく、自宅へ戻ったのだが。

迎えに出てくるはずの妻は買い物へ行って留守だった。

代わりに出てきたのはお手伝いの柳瀬佳苗(やなせかなえ)で。

長い付き合いの彼女がかいがいしく世話をしてくれるものの、

雅秋はいつも通りではない状況に物足りなさを感じていた。

「今日もお仕事お疲れ様でした。先に着替えていらっしゃる?」

 居間の一間廊下では、

娘の由真が末弟の涼介相手にままごとをしている。

「じゃあ、着替えてこようかな」

 涼介が告げると、由真は不満げに眉根を寄せた。

「違うでしょう、おじちゃまだんなさまは『ああ』って言うの!」

 由真が鞄をプラスティックの赤いカバンを持って夫役をしてみせる。

そんな光景を見ながら、雅秋は内心でぼやいた。

(あんなふうに見えるのか……)

 視線の先では涼介が手を合わせごめんごめん、と苦笑っている。

機嫌を直してふわりと微笑む由真が目に入り、

ふいにもやついていた心が軽くなった。


                             fin.
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ジャンル : 小説・文学

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メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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