57 喪失 (文兎)

「雨か……」

 文兎は空を見上げつぶやいた。

雨の日になると、昔亡くした幼なじみのことを思い出す。

彼はなぜか雨が好きで、

病弱だというのに窓を開け放ってまで雨の音を聴くことが好きだった。

 彼が亡くなったのもやはり雨の日で。

それはまるで空が悲しんでいるというよりも、

彼を喜んで迎えようとしているかのように見えた。

けれどそれでも、失くした彼の存在は思った以上に大きく、

今でもたまに鈍い痛みがこの胸に響く。

「未だにちゃんと見送れてないんだろうなあ」

 文兎はぼやき、傘を広げた。

歩道をゆっくりと歩きながら、

また墓参りにでも行こうとか、とぼんやり思った。

                        fin.
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ジャンル : 小説・文学

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Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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