58 親友 (梅宮忠信)

 仕事に没頭していた忠信は、扉を叩く音に我に返った。

入室の許可を出すと、

梅宮譲太郎(じょうたろう)が入ってくる。

母方の従兄である彼とは、幼い頃からの付き合いだ。

一見ボディガードかと間違えてしまうほど

ガタイのよい体格の持ち主なのだが、

将来的に自分の秘書になるらしい。

今は、秘書見習いとして父の秘書の下について色々と

学んでいると聞いている。

「忠信様、そろそろお時間です」

 今日は週に一度の家族との食事会だ。

それを知らせにきてくれたのだろう。

ありがとう、と礼を言いながら椅子から立ち上がった。

「はぁー憂鬱だなぁ」

 今日も何か小言を言われるに違いない。

そう思うと忠信の足は重くなる。

「ですが、役員の方々が忠信様のことを
 褒めていらっしゃいましたよ」

「他の人がいくら褒めてくれても、
 お母様とお父様の目には褒めるに値しないんだよ」

 終業チャイムがなり、部屋を出る。

外に出るとともに譲太郎の仕事時間も終わったようだ。

堅苦しかった言葉が砕けたものへと変わる。

「まぁ、なんだ。終わったら飲みに行くか?」

 秘書から親友の顔に戻った彼に肩を軽く叩かれ、

忠信は笑顔を向けた。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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