65 蝶 (悟)

蝶を見ると、少年時代の苦い思い出が蘇る。

 あれは梅畑雅秋と森へ昆虫採集に出かけたときのことだ。

しばらく普通に飛びまわる蝶を追いかけていた雅秋が、

なにを思ったのか突然立ちどまり腰のベルトを抜きとった。

「雅秋? どうし……」
 
 言いかけた口から言葉を出し切る前に、それは起こった。

雅秋がベルトをしならせ、飛びまわる蝶へ向けてはなったのである。

「なんてことするんだよ!」

 両の羽根を落としぼとりと落ちた蝶を見て、悟は叫んだ。

だが、雅秋はこちらの声をきいても微笑んでくるのみである。

「逃げるからだよ」

 穏やかに告げてくる友人を前に、悟はかける言葉を失った。

                              fin.
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メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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