91 鎖 (雅秋)

幼い頃祖父に言われた言葉を、いまだに思いだす。

「お前は雅尚とは違う道をいきなさい。

そのためには、何事にも動じない男にならなくてはならん。

わかるな」

 若い時分には、正直意味もわからずとにかく必死に頷いていたが、

意図を理解した今は、思いだすたび気が重い。

「あの言葉の通りに生きられているのか、自信はないからな」

 ぽつりと呟くと、隣にいた秘書が顔をあげた。

「申しわけございません。何かおっしゃいましたか?」

「いや」

 雅秋は首を振り微笑む。

「何でもない。見えない鎖のことを思いだしていただけだから」

「はあ……」

 納得のいかない様子で眉をひそめる秘書を横目に、

雅秋は意識を仕事へと戻した。

                            
                             fin.
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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