92 桜 (野臥間邦夫)

 邦夫は、長老会と称し麗と朔太郎を連れ立って花見に来ていた。

とは言っても酒はなく、

あるのは近所の和菓子屋で買った桜餅と自販機のお茶だけだ。

「やっぱり花見には酒を持ってきたほうが
 良かったんじゃないか?」

 先ほどから朔太郎が、ペットボトルに入ったお茶を

ちびちびと飲みながら同じことを繰り返している。

「そんなこと言ったって……。朔ちゃんがお酒はよして
 たまには健全な花見をしようって言ったんじゃない」

「それはそうなんだけどよー」

 このやり取りを何度繰り返すのだろうか。

邦夫はよく飽きないものだと半ば呆れながら、

2つ目の桜餅を頬張った。

そのときだ。

つむじ風が地面に散らばっていた桜の花びらを巻き上げる。

言い合いを続けていた朔太郎と麗の声もやみ、

三人は黙ったまま空へ舞い上がる花びらを眺めていた。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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