96 継承者 (狼谷朔夜)

 夫の月命日。

朔夜は彼が眠っている墓石に向かって語りかけた。

「あなた、満が長になっちゃったわ」

 長は血で継承されるわけでもないのに。

自分の父から夫へ、

そして息子へと継承されている現実に朔夜は苦笑した。

「なんだか呪われてるみたいよね」

 黄金梅の恩恵だったはずなのに。

果たしてそれは本当に恩恵だったのだろうか。

そんなふうに考えてしまうのは、

長となった父や夫の苦悩を近くで見てきているからだろうか。

「おめでとうって言ってあげなきゃダメよね」

 同じ苦悩をこれから息子が味わうのかと思うと、

どうしても素直に喜ぶことができない。

何より、彼が進もうとしている道は

夫たちよりも厳しい茨道なのだ。

「あの子の進む道を天国から照らしてあげてね」

 朔夜は雲ひとつない空を見上げながら呟いた。

(了)
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やどりぎ

Author:やどりぎ
ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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