99 月 (文兎)

仕事を終え、自宅へ戻る。

鍵を開けて中に入ると、窓にかかったレースのカーテンから、

蒼い月の光がさしこんできていた。

文兎は部屋の明かりをつけず窓から外を眺める。

空には無数の星々と白い月が浮かんでいた。

「もうすぐ満月か」

 丸みを帯びた月を見上げ、一人呟く。

そう言えば、昔はよく名前のことでからかわれたものだ。

『今日は満月だから兎は月に帰るんだろう?』

 反論できず悔しい思いをしていたことが、今では懐かしい。

「もっとフットワークを軽くしないと、

あの人にはついていけないからなあ」

 雅秋の大望を叶えたいならば、それこそ兎のように跳びはねなければ。

「まだまだだなあ、俺」

 文兎は溜め息をつき、窓辺を離れる。

部屋の明かりをつけ、今日の夕飯を作りはじめた。


                               fin.
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テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

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ようこそ、こちらはオリジナル小説サークル『宿り木』の小説ブログです。
メンバーの朝川 椛(あさかわもみじ)と高木 一(たかぎはじめ)の2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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