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1 月 (小山八十八)

written by 高木一

 小山八十八(こやまやそはち)は見渡す限り畑が広がっている場所に立っていた。

 ことの発端は、小山の勤める金星(かなぼし)製薬の社長の一声から始まった。

『行きの切符だけ買う金以外は置いて商品だけ持ち、商品を売って稼いだ金で帰ってこい』

 その指令とともに、小山は会社の商品である胃腸薬と湿布薬を風呂敷と袋につめ汽車へ飛び乗った。

 終着駅で降り、土地勘のない場所を彷徨い続けること数時間。いくつかの薬の販売店の他民家にも売り込みをかけたがことごとく拒否され続けた。その結果、着いたときは頭上にあった太陽がいつのまにか沈み、今は月が昇っている。

「月がこっちで、北極星がこっちってことは……南はこっちか」

 よかった。駅までの方向はわかった。線路を目指せば、民家も増えるだろう。

「よし! うちの商品が効果あるのは僕自信が実証済みだ」

 足に貼った湿布薬のおかげで痛みが引いてきた。代金は無事に会社へたどり着いたときに払えばいい。今は、なんとしても帰宅の切符代を稼がなくては。

 小山は地面に置いた商品の入った袋を再び肩から下げ、力強く歩き出した。

〈了〉

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