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2.キャンディー <綾木和彦(あやぎかずひこ)>

written by 朝川 椛

 叔父の綾木涼のポケットにはいつもお菓子が入っていた。
悲しい時、和彦が泣いていると決まって叔父がポケットから飴玉をくれたのだった。
丸くて水色の飴玉はソーダ味で、噛むとしゅわっとした甘酸っぱいものが口いっぱいに広がる。
和彦には叔父が魔法を使ったかのように感じられ、
魔法の飴玉で人を元気にする叔父を心から尊敬し、羨望の目で見つめていたものだった。


 やがて小学生になり、お小遣いで飴玉を買える歳になってから魔法はあっという間に解けてしまった。
だが、それでも叔父、涼の優しさは変わらず自分を助け続けてくれた。
そんな叔父がまさか末期の病に侵されていたとは、露ほども思わなかった。
「あの時気づいてればなあ」
 火葬場で叔父が骨になるまで待つ間しみじみ呟いたが、
両親や叔父叔母からの返答は何もなかった。
みんな随分と冷たい人たちだな、と思いもしたが、
叔父の人生を思ってみれば、しかたないかと独り溜め息を吐いた。
(叔父さんは、少しでも幸せだと思える時期が会ったのかなあ……)
 あればいいな、窓越しに見える緑色の山を見つめながら、和彦はスラックスのポケットに手を入れた。


 中身には当然なことに飴玉はなく。
知らない世界に初めて放り込まれたかのような心細さを、初めて噛み締めたのだった。



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Author:やどりぎ
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こちらはオリジナル小説
サークル『宿り木』の小説ブログです。
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2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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