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3 傘 (想田荊芥)

written by 高木一

「叔父様は傘をつかないの?」

 遊びにきていた従姉の娘、アカネに尋ねられ、荊芥(けいがい)は首をかしげる。

「傘? 傘はさすものだろう」
「違うわ。最近は昼でもステッキのように傘を持ち歩くのがおしゃれなのよ」

 ツンと顔をあげ、アカネは自慢げに話す。

 女性はおしゃれに敏感だというが、年は関係ないらしい。アカネは尋常小学校へ通っている娘と同じくらいのはずだが、もしかしたら娘もそう思っているのだろうか。

 荊芥は傘をステッキ代わりに持つ自分を想像した。

 右手に傘を左腕には外出の際にいつも持っている画材道具。

(うーん。絵を描いている途中でどこかに置き忘れそうだなぁ)

 容易に想像できる末路に荊芥は寝ぐせのついた頭をかく。

「雨も降ってないのに傘なんて持ってたら邪魔じゃないかなぁ」

 肩を竦めながら返すと、アカネが頬を膨らませる。

「まっ! 叔父様ったらおしゃれをする気概がないのね。そんなだから麻紘もおしゃれをしないのよ!」
「……ぼくがおしゃれじゃないのと麻紘は関係ないと思うんだけど」

 腰に手をあて、アカネがまくし立ててきた。荊芥が気圧されながらも反論すると、彼女はさらに持論を続ける。

「関係は大ありよ! もう少し叔父様がおしゃれに敏感だったら麻紘だっておしゃれに目覚めていたはずだもの」
「えー」

 荊芥はアカネの言いがかりに嘆息した。だが、その言い方こそ幼い頃から姉のように接してくれているアカネの母、多部菊花にそっくりだった。そのせいだろうか。最近、アカネに口では敵わなくなっている気がする。

「今からでも遅くないわ、叔父様!」
「……ぼくはいいよ。それよりアカネがぼくの分まで、麻紘のおしゃれに目を向けてあげればいいと思うよ」
「もう仕方ないわね。わかったわ、私が叔父様に代わって麻紘をおしゃれにしてみせるわ」

 ふふっ、とアカネが菊花そっくりの笑みを作った。

(……麻紘、ごめん)

 荊芥は、アカネに振り回されるであろう娘を思い、心の中で謝罪した。

〈了〉

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