4.天秤<須永園子(すながそのこ)>
written by 朝川 椛
思えば園子は、生まれた時から天秤にかけられてばかりの人生だった。
自分の幸福と、自分の家の幸福。
どちらが重いか。
この2つについて周りの大人たちは、園子がまだ幼かった頃から口々に語って聞かせてくれた。
曰く、「家の方が重い」と。
あまりに小さな頃から言われて育ったため、園子はそのことを疑問にも思わなかった。
だと言うのに、自分の孫は園子の思いを裏切っていく。
「今どき家のために結婚なんか真っ平よ!」
孫はそう言って園子をあしらう。
父親のいない孫にとっては結婚するということ自体が足枷にしかすぎないのだろう。
「あたしは好きな人と好きなことを仕事にして生きていくの!」
彼女の天秤は園子と違って明るく輝いている。
自分には想像もしなかった生き方。
そんな生を孫娘が生きていくのなら、見てみたいと思った。
「あなたはどっちを取るのかしらねぇ」
呟くと、孫はさも当然と言わんばかりに手を腰に当てた。
「やだ。おばあちゃん。どっちもよ。決まってるじゃない!」
まさかの両天秤とは。
園子は声をあげて笑い、訝しがる孫娘の顔を眩しげに眺めた。
了
思えば園子は、生まれた時から天秤にかけられてばかりの人生だった。
自分の幸福と、自分の家の幸福。
どちらが重いか。
この2つについて周りの大人たちは、園子がまだ幼かった頃から口々に語って聞かせてくれた。
曰く、「家の方が重い」と。
あまりに小さな頃から言われて育ったため、園子はそのことを疑問にも思わなかった。
だと言うのに、自分の孫は園子の思いを裏切っていく。
「今どき家のために結婚なんか真っ平よ!」
孫はそう言って園子をあしらう。
父親のいない孫にとっては結婚するということ自体が足枷にしかすぎないのだろう。
「あたしは好きな人と好きなことを仕事にして生きていくの!」
彼女の天秤は園子と違って明るく輝いている。
自分には想像もしなかった生き方。
そんな生を孫娘が生きていくのなら、見てみたいと思った。
「あなたはどっちを取るのかしらねぇ」
呟くと、孫はさも当然と言わんばかりに手を腰に当てた。
「やだ。おばあちゃん。どっちもよ。決まってるじゃない!」
まさかの両天秤とは。
園子は声をあげて笑い、訝しがる孫娘の顔を眩しげに眺めた。
了
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