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6 かすみ草 (稲村ふみ)

written by 高木一

 ふみは、昨夜主人からもらった花を花瓶に活けていた。いくつも分かれた枝先に、白くて小さな八重咲きの花が無数についている愛らしい花だ。最近日本へ外国から入ってきた花らしい。宿根カスミソウという名前だと夫が教えてくれた。

「可愛いお花ね。どうしたの?」

 ふみが鼻歌交じりに花を活けてると、背後から雇い主の娘である想田麻紘(そうだまひろ)が声をかけてきた。生薬畑の帰りなのだろう。麻紘は頭に手ぬぐいを巻きつけ、麻の葉の刺し子刺繍がされた藍染着物ともんぺ姿のままだった。

「主人が珍しい花を見つけたからお嬢様にぜひご覧になって欲しいと言いまして」

 ふみは、麻紘に見えるよう体をずらした。昨夜、この花を手渡されたときのことをそのまま告げると、麻紘は手ぬぐいを頭から外しながら小さく笑う。

「ふふふ。未四郎さんは相変わらず照れ屋ね。素直にばぁやのために買ってきたって言えばいいのに」
「お嬢様、主人は本当にお嬢様にご覧にいれたかったのですよ」

 ふみは、お嬢様に直接渡したかったであろう夫の気持ちを代弁した。だが、それすらも麻紘は照れ隠しだと勘違いしてしまったようだ。

「ばぁやも照れ屋さんなんだから。未四郎さんがそういう人だってしってるでしょう。本当、似た者夫婦ね」

 麻紘がやれやれと言わんばかりに、肩を竦めながら土間を抜け、水場へと去って行く。

「わたしは照れ屋ではございません。主人とは違います」

 ふみは小さく訂正しながらも、麻紘に見透かされたようで顔が熱くなるのがわかった。

〈了〉

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