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7 花火 (岩崎とし)

written by 高木一

「打ち上げ花火もいいけど、私は線香花火の方がいいね」

 としは縁側で夫と一緒に、ちりちりと揺れる線香花火の火球を見つめた。少し離れたところでは孫たちが、誰が最後まで消さずにいられるか競い合っている。

「線香花火の燃え方には名前があるんだとよ」
「そうなのかい?」

 相槌を打った拍子に、火球がぽとりと地面に落ちた。せっかく大きく育ち始めたところだったのに。としは恨みがましくと夫へ視線を送る。しかし、史郎(しろう)はこちらの態度など気にしたふうもなく新しい線香花火を渡してきた。

「火をつけたばかりのを蕾って言うんだと」

 今度は夫も一緒にやるようだ。火がつくと火球が微かに震え、次第に火花が飛び出す。

「蕾の次は牡丹。その次が松葉」

 としは夫の声に耳を傾けながら線香花火を見つめた。さらに多くの火花が四方八方に激しく飛び出し始める。だが、その勢いも次第に弱くなり始めた。

「これは柳で、最後は散り菊って言うんだと」

 花びらが散っていくように火花が地面へと落ちていき、今まで落ちる気配の見せなかった火球が最後にぼとりと落ちた。

「あぁ、終わっちまったねぇ」

 火が燃えていた時間はとても短いはずなのに集中して見ていたからだろうか。なんだか夢から覚めたような不思議な気分になった。

「もう一回するか?」
「そうだねぇ」

 燃え方の名前を知ると線香花火も見え方も変わってくるかもしれない。としは史郎から差し出された線香花火を手に取った。

〈了〉

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