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6.花火<綾木和彦(あやぎかずひこ)>

written by 朝川 椛

「花火を観に行こうか?」

 そんなふうに問いかけてきたのは叔父の綾木涼だった。
「観るよりやりたい!」

 他人の家の花火を観て何が楽しいものか。
幼かった自分にとって家庭用の花火が花火のすべてであり、
空にどかんと咲くようなものなど観たことがなかったのでそう即答する。
だが、叔父の涼は苦笑して、青空を指さした。

「もっと高いところに上がるやつだよ。本当に花みたいで素晴らしいよ」
「そうなの?」

 そんなものがあるなら確かに観てみたいかもしれない。

「なら、行ってみたい」

 多少懐疑的になりながらも承諾すると、涼が嬉しげに微笑んだ。

「昔ね、ある人と観に行く約束をしたんだけど、叶えられなかったなあ」

 ぼんやりと雲ひとつない空を眺めながら呟く叔父の横は、
少しだけ元気がなく、けれどどこか幸福そうでもあった。

「早く父さんと仲直りできるといいね」

 訳知り顔で言い放った言葉に、叔父は苦笑する。
あ、多分違ったんだ。
直感的に悟ったが、後の祭りで、和彦は頭を撫でてくれる叔父に申し訳ない気持ちになった。

『叔父さんが約束した人って誰なんだろう?』

 興味を持ちはしただが、和彦は尋ねることはせず、空を眺め続ける叔父の隣に佇み続けた。


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Author:やどりぎ
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サークル『宿り木』の小説ブログです。
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と高木 一(たかぎはじめ)の
2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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