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9.無人島<平岩文人(ひらいわふみと)>

written by 朝川 椛


 もし無人島に行くことができるのなら、と平岩文人は考え、
隣で本を読む恋人の由江を見つめた。

「なあに?」

 視線に気づいた由江が顔をあげる。
文人は彼女の髪にそっと触れた。
由江が心地良さげに瞳を閉じる。
無人島に行くことができるなら、と文人はまた想像した。

「もしそんなことができるなら、絶対に君を連れて行くよ。そこで2人だけで暮らすんだ」

 それはどんなに幸福なことだろう。
夢見るような気分で囁くと、由江がくすりとわらった。

「そんなことってどんなこと? どこで暮らすの?」
「無人島さ」
「本気? 2人だけで?」
「そう」

 そうすれば、由江は自分だけのものだ。
自分が他の人間を見ることも、その逆も有り得ない。

「幸せだろうなあ」

 しみじみと告げると、由江が文人の肩へ寄りかかってきた。

「そうかもしれないわね」

 噛み締めるような声音で吐き出された言葉に、文人は知らず胸を騒がせた。



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