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11.血<須永由江(すながゆきえ)>

written by 朝川 椛

 悲しいのはこの血のせいではない。
由江はそう自分に言い聞かせて今まで生きてきた。
八百比丘尼の子孫。それは恐らく事実で、けれど真実ではない。
よしんば祖先が人魚の肉を食したのだとしても、
自分たちが受け継いできた伝承には、八百歳も生きたという記録は一切ないのだから。

 なのに、恋人の文人は八百比丘尼の子孫である由江に価値を見出している。
自分にとっては何よりそれが耐え難い。

(ねえ、文人。私は文人に私自身を見て欲しいよ。
それとも八百比丘尼の子孫としての私しか、必要じゃないの?)

 聞いてみたいけれど、怖い。
頷かれたら、自分はどうなってしまうのだろう。

「きっと壊れる」

 断言できる。
それくらい自分にとって文人は特別な存在になってしまっているから。
ならば、どうすれば……。
由江は自問自答する。

「演じるしか、ないの?」

 文人の望む由江を。
八百比丘尼である自分を。
ぐるぐると思考が巡る。
今日も答えが出ぬままに、由江の一日は過ぎ去っていくのだった。


                                            了
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2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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