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12 お粥 (稲村ふみ)

written by 高木一

 ふみは台所で庭から採ってきたセリを茹でていた。セリの他にも、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、それに蕪の葉と大根の葉もある。

「ばぁや、何してるの?」

 ふみが七草粥を作るための下準備をしていると麻紘が顔を覗かせた。ふみは今年で五つになる麻紘の澄んだ黒い瞳と目を合わせ、にこりとほほ笑んだ。

「七草粥の準備でございます、お嬢様」
「え? だってもう二月よ? 七草粥って一月七日にするものでしょう」

 麻紘の切れ長の瞳が大きく見開いた。少し前に教えたことをよく覚えている。さすがはお嬢様だ。ふみは麻紘の聡明さに感心した。

「そうでございますよ、お嬢様。ですが明日も旧暦で言えば一月七日になります」
「そうなの?」
「ええ。ですので明日の朝食は七草粥でございます」
「そうなんだぁ。あ! ばぁや、あのお歌また歌うの?」
「七草囃子でございますね。もちろんでございます。お嬢様もご一緒に歌ってくださいますか?」
「うん。私も一緒に歌う」

 ふみは茹であがったセリなどをまな板の上に置いた。そして包丁を手に取り、歌い始める。

「七草なずな、唐土の鳥が、日本の国へ、渡らぬ先に、ストトントント、ストトントント」

 子供特有の高い歌声に合わせて、包丁で叩きながら七草を刻む。麻紘が背伸びをして覗き込む。その愛らしい姿にふみは顔を緩ませた。

〈了〉

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