12.お粥<綾木涼(あやぎりょう)>
written by 朝川 椛
子供の頃、風邪を引くと必ず母親が粥を作ってくれた。
涼はその粥が大好物だった。
だが、その事を兄弟たちに話すと、決まって笑いの種にされる。
子供の頃、風邪を引くと必ず母親が粥を作ってくれた。
涼はその粥が大好物だった。
だが、その事を兄弟たちに話すと、決まって笑いの種にされる。
「あんなノリでしかないものの何が美味いんだ?」
「味も素っ気もないものねえ」
口々に言われても涼にとってお粥は母の味だった。
「梅干しを入れたら風味も出るし、鰹節を入れたっていいじゃないか」
反論すると、長兄がくすりと笑う。
「お前、昔っから母さんに人一倍甘えていたからなあ」
「そんなことは……」
暗にマザコン扱いされ、涼はムッとする。
一番大事にされているのはどちらにしても長兄なのだから。
けれど、涼は溜め息を吐くことで、その言葉を呑み込む。
「そんなこと言ってると、今に時代に取り残されるぞ。
いずれ粥専門店なんてのができるかもそれないじゃないか」
「おう。それなら今からお前がやってみればいいじゃないか。なあ、みんな」
長兄が肩を叩いてきた。
愉快げに笑い合う兄弟たちの中で、涼は一人苦い思いを抱くのだった。
了
「味も素っ気もないものねえ」
口々に言われても涼にとってお粥は母の味だった。
「梅干しを入れたら風味も出るし、鰹節を入れたっていいじゃないか」
反論すると、長兄がくすりと笑う。
「お前、昔っから母さんに人一倍甘えていたからなあ」
「そんなことは……」
暗にマザコン扱いされ、涼はムッとする。
一番大事にされているのはどちらにしても長兄なのだから。
けれど、涼は溜め息を吐くことで、その言葉を呑み込む。
「そんなこと言ってると、今に時代に取り残されるぞ。
いずれ粥専門店なんてのができるかもそれないじゃないか」
「おう。それなら今からお前がやってみればいいじゃないか。なあ、みんな」
長兄が肩を叩いてきた。
愉快げに笑い合う兄弟たちの中で、涼は一人苦い思いを抱くのだった。
了
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