13 オレンジジュース (千葉みさを)
written by 高木一
いつもより少し遅い休日の朝。みさをは寝間着姿のままの夫へ話しかけた。
「義利さんミカンを絞ったんですけど飲みますか?」
「ミカン? うん」
寝ぼけているのだろうか。目を擦りながらも頷く義利へ、搾りたてのミカンジュースを出す。室内にはミカンの爽やかな香りが漂っていた。義利が喉を鳴らして飲み干す。
「美味い!」
みさをは頬を緩めた。
「でもうちにミカンなんてあったっけ?」
手の甲で口元を拭う義利へみさをは絞り切れずに残っているミカンを持ってくる。
「としさんからミカンをたくさんいただいたの」
籠一杯にもらったミカンは、としが知り合いからもらったものらしい。これ以外にも箱の中にまだ唸るほど入っている。
「としさんって岩崎さん?」
「ええ。息子さんと一緒に届けに来てくださったの」
妊婦にはミカンがいいからと言って笑ったとしの顔を思い出し、みさをはくすりと笑った。
「みさをがご近所さんと仲良くなれてよかったよ」
「としさんのおかげで麻紘様やふみさんと知り合いになれたし、本当にありがたいことです」
「岩崎さんには足を向けられないね」
義利が心の底から安堵するように、肩を竦めて見せた。昼間一人になってしまう自分をとても心配していたから余計だろう。今日は夫に安心してもらえるよう、彼女たちの話をしよう。どんな話題にしようか。みさをはとしたちとの会話を脳裏に思い浮かべながら、義利へ話す内容を考えた。
〈了〉
いつもより少し遅い休日の朝。みさをは寝間着姿のままの夫へ話しかけた。
「義利さんミカンを絞ったんですけど飲みますか?」
「ミカン? うん」
寝ぼけているのだろうか。目を擦りながらも頷く義利へ、搾りたてのミカンジュースを出す。室内にはミカンの爽やかな香りが漂っていた。義利が喉を鳴らして飲み干す。
「美味い!」
みさをは頬を緩めた。
「でもうちにミカンなんてあったっけ?」
手の甲で口元を拭う義利へみさをは絞り切れずに残っているミカンを持ってくる。
「としさんからミカンをたくさんいただいたの」
籠一杯にもらったミカンは、としが知り合いからもらったものらしい。これ以外にも箱の中にまだ唸るほど入っている。
「としさんって岩崎さん?」
「ええ。息子さんと一緒に届けに来てくださったの」
妊婦にはミカンがいいからと言って笑ったとしの顔を思い出し、みさをはくすりと笑った。
「みさをがご近所さんと仲良くなれてよかったよ」
「としさんのおかげで麻紘様やふみさんと知り合いになれたし、本当にありがたいことです」
「岩崎さんには足を向けられないね」
義利が心の底から安堵するように、肩を竦めて見せた。昼間一人になってしまう自分をとても心配していたから余計だろう。今日は夫に安心してもらえるよう、彼女たちの話をしよう。どんな話題にしようか。みさをはとしたちとの会話を脳裏に思い浮かべながら、義利へ話す内容を考えた。
〈了〉
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