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14 盛夏 (岩崎とし)

written by 高木一

 太陽がじりじりと身体を照りつける。まだ朝と言っていい時間帯なのに日差しは強い。

「父ちゃん、休憩にしよう」

 としは曲げていた腰を伸ばし、少し離れた場所で農作業をしている夫の史郎へ声をかけた。

「おぉ」

 麦わら帽子を脇に抱え、首に巻いている手ぬぐいで汗をふき取りながら息子にも声をかける。

「博史ー! 茶にしよう」

 畑からあぜ道へ出ると、大きな桜の木が生えている。春にはこの根元に茣蓙をひき、花見をするのが岩崎家の決まり行事だ。淡い桃色の花びらがつく枝には緑の葉が生い茂っている。

 としは家から持ってきた漬物を広げ、麦茶を注ぎ史郎と博史へ渡した。

「麦茶がうめぇ!」
「漬物も食え」

 博史が一気に麦茶を飲み干すと、隣で史郎がキュウリの漬物を進める。汗を大量にかいたから、きゅうりの塩気が事の他身に染みるだろう。としは、息子と夫の漬物の噛む小気味よい音を聞きながら、麦わら帽子で風を仰いだ。

「今年の夏は特に暑いのかねぇ?」
「母ちゃんそれ毎年言ってないか?」

 呆れを含んだ博史の言葉にムッとしていると、夫が宥めるように爪楊枝についた漬物を差し出してくる。

「母ちゃんも倒れないように食え」
「ありがとうね」

 熱さのせいでどうにもイライラしてしまう。まだまだやることはたくさん残っているのだ。怒りで体力を消耗しては体がもたない。としは、史郎から差し出された漬物を手に取った。

「やっぱりうちの漬物は美味いねぇ」

 口中に広がるしょっぱさに、イライラがすっと消えてなくなった気がした。

〈了〉

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