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18 桜 (岩崎とし)

written by 高木一

 としがいつものように桜の木の下で休憩していると、見知った顔を見つける。

「おみさちゃんじゃないか、どうしたんだい?」
「気分がいいのでお散歩です。以前からこの大きな木が何の木なのか気になっていて」

 立ち上がり彼女に近づくと、みさをがお腹をなでながら桜の木を見上げた。彼女と知り合ったのごく最近のことだ。妊娠からくる貧血のせいで道端でうずくまっているところを見つけたの始まりだ。自分よりもうんと若い彼女を見ていると娘を見ているようでなんだかほっておけなかったのだ。

「桜だったんですね」
「春にはそりゃ見事な花が咲くんだよ」
「そうなんですね」

 見てみたいなぁ、と言いながらずいぶんと目立ってきたお腹へ語り掛ける姿は母親そのもので。としはみさをへ笑みを向ける。

「花が咲く頃になったら家族3人で来てみたらいいさ」
「家族3人?」

 みさをがきょとんとした顔で首をかしげた。

「お腹の赤ちゃん、春にはもう生まれてるだろう」
「あ、そうですね。そっかずっとお腹の中にいるわけじゃないですもんね」

 みさをが愛おし気に腹をなでる。自分も昔はこうだったのだろうか。すっかり成長し大人になった子供たちを思い浮かべながら、としはみさをを見つめた。

〈了〉

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