19.声<須永園子(すながそのこ)>
written by 朝川 椛
須永園子は未だに母の夢を見て飛び起きる時がある。
母は91歳でまだ健在である。
が、今の母が呼ぶのではなく、若い頃の母が自分を呼ぶ声に、ビクリとしてしまうのだ。
須永園子は未だに母の夢を見て飛び起きる時がある。
母は91歳でまだ健在である。
が、今の母が呼ぶのではなく、若い頃の母が自分を呼ぶ声に、ビクリとしてしまうのだ。
そんな時、決まって娘の由江が正気に戻してくれる。
「母様、母様! 大丈夫?」
そんな愛娘の声を聴くと、
ああ、今夜もまた帰って来られた、と安堵することができる。
「大丈夫ですよ」
「またお祖母様の夢?」
「ええ、呼ばれるのよ。名前を」
「母様……」
幾度繰り返されたかわからない会話。
由江も自分を救うことはできないとわかっているのだろう。
吐息して、背中を叩くと、また寝床につく。
「大丈夫よ」
近いうちに、きっとこの呪縛から逃れることができる。
園子は一人確信するのだった。
了
「母様、母様! 大丈夫?」
そんな愛娘の声を聴くと、
ああ、今夜もまた帰って来られた、と安堵することができる。
「大丈夫ですよ」
「またお祖母様の夢?」
「ええ、呼ばれるのよ。名前を」
「母様……」
幾度繰り返されたかわからない会話。
由江も自分を救うことはできないとわかっているのだろう。
吐息して、背中を叩くと、また寝床につく。
「大丈夫よ」
近いうちに、きっとこの呪縛から逃れることができる。
園子は一人確信するのだった。
了
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