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23 屋上 (想田麻紘)


この話は「22 お土産(想田荊芥)」 とリンクしています。

written by 高木一

「はぁ」

 女学校の屋上。麻紘(まひろ)は、誰もいないのをいいことに盛大なため息を吐いた。手には、手ぬぐいがある。その中には昨日父がお土産と称して拾ってきた大量の蝉の幼虫の抜け殻が入っいた。

「……せっかく父様が拾ってきてくれたけど、この蝉の抜け殻は漢方には使えないのよねぇ」

 本来生薬として使用される蝉は、日本には生息していない。外見はクマゼミによく似た大型種の蝉なのだが、翅(はね)の脈がクマゼミのように緑色ではなく赤味がかっているのだ。そして主な生息地は朝鮮半島から中国、台湾、インドシナ半島北部である。手に入れたときにそのことを話し忘れてしまってせいで、父は日本にいる蝉だと思ってしまったのだろう。

「……どうしよう。これ」

 嬉しそうな顔で渡してきた父に向かって訂正することも、ましてや捨てることもできなかった。家に置いておくこともできず持ってきてしまったが、どう処理をすればいいものか。1、2匹程度なら証拠隠滅とばかりに捨ててもバレないと思うが、父が取ってきた数は数十匹はくだらない。父の目を盗んで畑の肥料にすることは可能だろうか。麻紘は逡巡しながらもう一度大きなため息を吐いた。

〈了〉

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