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23.屋上<綾木和彦(あやぎかずひこ)>

written by 朝川 椛


「なあ、屋上に行かねぇ?」

 友人に誘われて、和彦は心の底から驚いた。
自分が屋上へ誘われたことが、ではない。
大学の屋上に入ることができることが、である。

「うちの大学屋上でビオソープとかやっててちょっとした憩いの空間になってるんだぜ」
「ビオソープって、まさか池まであるのかよ」
「そうだよ、パンフレットにも書いてあったろうが」
「マジかあ」

 自然保護運動に特別な興味を抱いているわけではないが、
屋上に小さな森が出来ているかもしれないという話には心が踊る。

「昼はそこで食べないか?」

 尋ねられ、和彦は一にも二にもなく首肯した。

「俺、弁当作ってきて良かったよ」
「また自家製かよ。お前そういうの器用だよなあ」
「ああ。師匠が良いから」

 肩を竦めてみせると、ああ、と友人が笑った。

「叔父さんだっけ? いいよなぁ、そんな身内がいてさ」
「まあね」

 講義室を出ていきながら頷くと、友人が眩しげに見てくる。

「お前、本当にオジコンだよなあ」
「なんだよ、それ」

 和彦は友人の言葉に声をあげて笑いながら、エレベーターに乗り込むのだった。


                                                 了
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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2人で100のお題をお借りし、
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