27 ウィルス (想田麻紘)
written by 高木一
「すごいのねぇ」
麻紘は感嘆の声をあげた。手にはハトコの和泉仁(いずみじん)が忘れていったノートがある。彼は帝国大学医学部の学生で、久々に顔を見に来てくれていたところだった。漢方薬を幼い頃から作っていると知っているから、西洋医学にも興味があると思ったのだろう。話のタネとばかりにわざわざノートを持参してくれたのだ。結局、互いの近況報告や昔話で盛り上がってしまい、西洋医学については話さずに終わってしまった。だからこそノートの存在を仁も忘れて帰ったのだろう。
「お嬢様、どうかしましたか?」
ふみが声に反応して顔を覗かせた。
「西洋医学では病気の原因に、細菌よりも小さなウィルスってものがあるんですって」
「小さいってどれほど小さいのですか?」
麻紘は、顔をかしげるふみと一緒になって首をひねった。
「さぁ? でも細菌はカビのことだから目に見えるでしょう。だけどウィルスはそれ以上に小さいというのだから目に見えないんじゃないかしら?」
「まぁ! それでしたらどうやって発見したのでしょうね」
ふみが目を丸くして驚く。少し前の自分も彼女と同じような表情だったに違いない。
「今度、仁兄様に訊いてみるわ」
麻紘は仁の忘れ物のノートをふみへ見せた。
〈了〉
「すごいのねぇ」
麻紘は感嘆の声をあげた。手にはハトコの和泉仁(いずみじん)が忘れていったノートがある。彼は帝国大学医学部の学生で、久々に顔を見に来てくれていたところだった。漢方薬を幼い頃から作っていると知っているから、西洋医学にも興味があると思ったのだろう。話のタネとばかりにわざわざノートを持参してくれたのだ。結局、互いの近況報告や昔話で盛り上がってしまい、西洋医学については話さずに終わってしまった。だからこそノートの存在を仁も忘れて帰ったのだろう。
「お嬢様、どうかしましたか?」
ふみが声に反応して顔を覗かせた。
「西洋医学では病気の原因に、細菌よりも小さなウィルスってものがあるんですって」
「小さいってどれほど小さいのですか?」
麻紘は、顔をかしげるふみと一緒になって首をひねった。
「さぁ? でも細菌はカビのことだから目に見えるでしょう。だけどウィルスはそれ以上に小さいというのだから目に見えないんじゃないかしら?」
「まぁ! それでしたらどうやって発見したのでしょうね」
ふみが目を丸くして驚く。少し前の自分も彼女と同じような表情だったに違いない。
「今度、仁兄様に訊いてみるわ」
麻紘は仁の忘れ物のノートをふみへ見せた。
〈了〉
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