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28 ゴミ (想田荊芥)

written by 高木一

 それは定期的に依頼される人物画を従姉の菊花に受け渡す日の出来事だった。

「荊芥さんはこんなにも美しい百合さんをお描きになられるのになぜあのような絵ばかりお描きになるの?」

 工房で依頼品の確認をしてもらっているとふいに菊花からの質問された。だが荊芥にはその質問の意味が分からず首をひねる。

「あのような絵?」
「これですわ! お描きになられた荊芥さんには何かわかっていらっしゃるのかもしれませんが、私には生ゴミにしか見えませんもの」

 菊花が薄墨色の横縞が入った帯から扇子を取り出し、壁に立てかけて置いたキャンバスを差した。そこには先日描き上げた、掘り起こされたばかりの川(せん)キュウの根が描かれていた。里芋のような根茎を守るように細長い根が這っている絵だ。
 荊芥には卵を守る鳥の巣のように見えるのだが、ほぼこげ茶や茶といった同系色でしか描かれていない。自分と同じような感想を抱く人は少ないだろう。むしろ菊花が言うようにゴミに見える人の方が多いかもしれない。

「アハハハ。菊花姉さんは歯に衣着せないねぇ」

 荊芥は、きっぱり言い切る菊花の言葉に声を立てて笑った。

「私は荊芥さんを弟のように思っておりますもの。家族に遠慮など不必要でございましょう?」

 吊り気味の従姉の瞳が少しだけ下がった。言いすぎたと思っているのだろうか。荊芥は、意外に繊細なところがある菊花を安心させるため、にこりとほほ笑んだ。

「もちろんだよ。ぼくも菊花姉さんにはいつも甘えてばかりだからねぇ」

 口ではきついことを言ってくるがいつも自分たち家族のことを気遣ってくれる優しい従姉には感謝しかない。こうして生き長らえているのも、彼女が定期的に仕事をくれるおかげだ。

「これからも頼むよ、菊花姉さん」
「当然ですわ。荊芥さんに言われるまでのありません。改まって変な荊芥さんですわね」

 菊花が照れ臭そうにツンっとそっぽを向く。荊芥は昔から世話好きで恥ずかしがり屋の従姉の姿に頬を緩めるのだった。

〈了〉

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