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30 温泉 (小山八十八) 

written by 高木一

「おはようございます」

 小山が出社するとすでに村上は席についていた。

「はよう」

 村上が顔は本へ向けたまま手をあげ応える。小山はカバンを脇へ置き、自席から村上の席を覗き込んだ。

「先輩何読んでいるんですか?」
「これか? これは日本鉱泉誌ってやつだ」
「日本鉱泉誌? 温泉でも行かれるんですか?」

 聞きなれない本の名前だが、小山は適当なあたりをつけ質問した。

「行きたいねぇ。でもこれは違うんだよ」

 どうやら見当違いだったらしい。では何についての本なのだろうか。小山は疑問をそのままぶつける。

「温泉じゃないんですか?」
「いや温泉のことだよ。温泉ってさ湯治場とも言うだろう。だから温泉街の薬屋でうちの湿布薬とか置いてくれるんじゃないかなってさ」
「なるほど! 東京の近くですと箱根や熱海とかですかね?」
「最近じゃ、こういうところ別荘とか建ててるお金持ちもいるみたいだし、薬屋もあると思うんだよな」
「いいですね」

 娯楽目的ではなく、仕事に繋げるための下調べだったとは。さすが先輩だ。見習わせてもらおう。小山は尊敬の念を込め、相槌を打った。

〈了〉

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