31 果実 (千葉みさを)
written by 高木一
「顔色よくなりましたね」
「ありがとうございます。麻紘お嬢様のおかげです」
みさをは麻紘の言葉に頭を下げた。としのおかげで近所づきあいができるようになって早数カ月。今日もまたとしと共に想田家へお邪魔しているところだった。
「先日、としさんから頂いたイチジクを日干ししてみましたのでどうぞ」
みさをはふみから小皿を受け取った。実は赤く、黄緑色の表面には水分が抜けたからだろうか。たくさんの皺ができている。
みさをがイチジクを眺めていると、麻紘がイチジクを見せつけるように手に取る。
「干しイチジクはお通じに効果があるんだけど、貧血予防になるんだよ」
「昔から便秘に効くってのは聞いたことがあったけど、貧血にも効くんだねぇ」
「あとね喉の炎症を和らげる効果もあるんだよ」
「へぇ、イチジクはすごいんだねぇ」
としが感嘆の声をあげた。みさをは麻紘たちの会話の中におずおずと加わる。
「あの妊娠中に食べないほうがいい果実とかあるんですか?」
イチジクの話題とは少し違ってしまうが、以前から知りたかったのだ。みさをが勇気を振り絞り声を出すと、麻紘がそうだなぁ、と考えるように人差し指を顎へつける。
「どんな食べ物でも取りすぎはよくないけど、妊娠中は冷えが大敵だから体を冷やしてしまう果物はできるだけ控えた方がいいかなぁ」
「スイカとかそういうやつかい?」
「ウリ科の植物は体を冷やす効果がありますものね」
首をひねるとしにふみがほほ笑みながら頷いた。そのあとを麻紘が続く。
「あと柿も水分がたくさん含まれているから食べすぎると体が冷えてしまうから食べすぎには注意が必要だね」
「柿もなんですか」
みさをは目を見開いた。どうしよう。今朝、柿を食べてしまった。みさをは大きくなったお腹へ手を置く。
「あ、あの今日柿を食べてしまったのですが大丈夫でしょうか?」
「たくさん食べすぎるのはダメってだけで、1日1個なら問題ないよ」
よかった。夫が食べた残りをもらっただけだから丸ごと1個は食べていない。みさをはホッと胸をなで下ろした。
「干し柿もかい?」
「干し柿の場合は取りすぎてしまうと貧血なってしまう恐れがあるんだ。でも1日1個までくらいだったら大丈夫だよ」
訊けてよかった。みさをはとしの問いに答える麻紘の声を聴きながら、ゆっくりとお腹をなでた。
〈了〉
「顔色よくなりましたね」
「ありがとうございます。麻紘お嬢様のおかげです」
みさをは麻紘の言葉に頭を下げた。としのおかげで近所づきあいができるようになって早数カ月。今日もまたとしと共に想田家へお邪魔しているところだった。
「先日、としさんから頂いたイチジクを日干ししてみましたのでどうぞ」
みさをはふみから小皿を受け取った。実は赤く、黄緑色の表面には水分が抜けたからだろうか。たくさんの皺ができている。
みさをがイチジクを眺めていると、麻紘がイチジクを見せつけるように手に取る。
「干しイチジクはお通じに効果があるんだけど、貧血予防になるんだよ」
「昔から便秘に効くってのは聞いたことがあったけど、貧血にも効くんだねぇ」
「あとね喉の炎症を和らげる効果もあるんだよ」
「へぇ、イチジクはすごいんだねぇ」
としが感嘆の声をあげた。みさをは麻紘たちの会話の中におずおずと加わる。
「あの妊娠中に食べないほうがいい果実とかあるんですか?」
イチジクの話題とは少し違ってしまうが、以前から知りたかったのだ。みさをが勇気を振り絞り声を出すと、麻紘がそうだなぁ、と考えるように人差し指を顎へつける。
「どんな食べ物でも取りすぎはよくないけど、妊娠中は冷えが大敵だから体を冷やしてしまう果物はできるだけ控えた方がいいかなぁ」
「スイカとかそういうやつかい?」
「ウリ科の植物は体を冷やす効果がありますものね」
首をひねるとしにふみがほほ笑みながら頷いた。そのあとを麻紘が続く。
「あと柿も水分がたくさん含まれているから食べすぎると体が冷えてしまうから食べすぎには注意が必要だね」
「柿もなんですか」
みさをは目を見開いた。どうしよう。今朝、柿を食べてしまった。みさをは大きくなったお腹へ手を置く。
「あ、あの今日柿を食べてしまったのですが大丈夫でしょうか?」
「たくさん食べすぎるのはダメってだけで、1日1個なら問題ないよ」
よかった。夫が食べた残りをもらっただけだから丸ごと1個は食べていない。みさをはホッと胸をなで下ろした。
「干し柿もかい?」
「干し柿の場合は取りすぎてしまうと貧血なってしまう恐れがあるんだ。でも1日1個までくらいだったら大丈夫だよ」
訊けてよかった。みさをはとしの問いに答える麻紘の声を聴きながら、ゆっくりとお腹をなでた。
〈了〉
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