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33 雨 (稲村ふみ)

written by 高木一

 しとしとと雨が降っている。ふみは、屋根や地面に打ち付ける雨音を聞きながら布に針を刺していた。傍らには、拙いながらもひと針ずつ刺している麻紘がいる。今日は運針の練習に丁度いいからと、麻の葉模様の刺し子を教えているところだった。

「ばぁや、この次はどうするの?」

 麻紘が綿布を差し出してくる。縦に縫われた黒糸は一定の間隔が保たれていてきれいだ。ふみは布を広げ、布に書かれた線に指を滑らせる。

「とてもよく縫えておりますよお嬢様。それでは隣の列も同じように縫ってくださいませ。ただし今度は指ぬきをきちんとお使いください」

「えー。これ使うと縫いにくいし、綺麗に縫えないから使いたくない」

 麻紘がぶかぶかの指ぬきをクルクルと回した。ふみは頬を膨らませ不貞腐れる麻紘の姿に、くすりと肩を揺らす。

「ですが指ぬきを使うと早く縫えて便利なのですよ。見ていてください」

 ふみは布を張り、中指にはめた指ぬきで針の頭を押さえ縫い始める。

「わぁ! ばぁやすごい!」
「ふふふ。練習すればお嬢様もこのように早く縫うことができますよ」

 瞳を輝かせ手を叩く麻紘に、ふみはさらに見せつけるように針を進めた。ある程度縫い、糸をしごいてからふみはじっと観察している麻紘へにこりとほほ笑む。

「ゆっくりでいいので少しずつ練習いたしましょう」
「うん。やってみる」

 やる気になってくれてよかった。今のうちに運針ができるようになれば、将来的に自分で着る着物も容易に縫うことができるだろう。ふみは麻紘を上手く誘導できたことに、胸をなで下ろした。
 
〈了〉

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