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33.雨 <須永由江(すながゆきえ)>

written by 朝川 椛


 夏、雨の日になると、よく母が窓辺に座って庭を見ていた。
丁寧にお茶を淹れ、
由江にも手渡してくれるので、毎回少し楽しみにしていた。
礼を言おうと母を見ると、母の園子は人待ち顔で空を見上げていた。

(誰を待っているのだろう?)

 子供心に思ったが、口にはせず茶を啜る。
テレビもラジオもつけず雨音だけに耳を澄ます時が続く。

由江はだんだんつまらなくなってきて、母に尋ねようとした。
だが、言葉が音になる直前、ははが呟いた。

「もうすぐ虹がでるわよ」

 何故わかるのだろう。
幼い由江にはわからなかったので、何も言わず立ち上がり縁側へ出た。

 すると、しばらくして、本当に空に薄らと七色の半円が現れたのである。

「本当だ! お母さんすごい!」

 嬉しげな母の面に見えるよう、出た虹を指さし告げる。

「雨はいつか上がるものよ」

 母が紡ぐ言葉の通り、雨は上がっていた。



                                    了
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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