34 双子 (岩崎とし)
written by 高木一
「ただいまぁ。はぁー、よっこらせっと」
としがいつもように麻紘の家から帰ると、普段だったら聞こえてくるはずの声がなかった。誰もいないのだろうか。帰り道で見える畑には史郎は元より長男の博史もいなかったので、てっきり家にいると思っていた。
「二人でどこかへ出かけたのかねぇ?」
ちょうど嫁も孫を連れて実家へ遊びに出かけているし、普段はなかなかできないことをしたくなったのかもしれない。としはそう結論づけ、家へあがった。板間を通り、茶の間へ入る。
「なんだい二人して」
縁側からの日差しで部屋の中は温かかった。そのせいなのだろう。いないと思っていた夫と息子が雑魚寝をしていた。右腕を枕にし、左手を腹の上に乗せ眠る二人の姿に、としはくすりと笑みを溢す。
「まるで双子のみたいだねぇ」
博史は幼い頃から自分よりも夫によく似ていた。成長してもそれは顕著だったが、眠る恰好まで同じなるほどだとは。
「私に絵心があったらねぇ」
夫たちの姿を模写できただろうに、とても残念だ。としは史郎たちの寝姿をつぶさに観察しながら彼らが目覚めるのを待った。
〈了〉
「ただいまぁ。はぁー、よっこらせっと」
としがいつもように麻紘の家から帰ると、普段だったら聞こえてくるはずの声がなかった。誰もいないのだろうか。帰り道で見える畑には史郎は元より長男の博史もいなかったので、てっきり家にいると思っていた。
「二人でどこかへ出かけたのかねぇ?」
ちょうど嫁も孫を連れて実家へ遊びに出かけているし、普段はなかなかできないことをしたくなったのかもしれない。としはそう結論づけ、家へあがった。板間を通り、茶の間へ入る。
「なんだい二人して」
縁側からの日差しで部屋の中は温かかった。そのせいなのだろう。いないと思っていた夫と息子が雑魚寝をしていた。右腕を枕にし、左手を腹の上に乗せ眠る二人の姿に、としはくすりと笑みを溢す。
「まるで双子のみたいだねぇ」
博史は幼い頃から自分よりも夫によく似ていた。成長してもそれは顕著だったが、眠る恰好まで同じなるほどだとは。
「私に絵心があったらねぇ」
夫たちの姿を模写できただろうに、とても残念だ。としは史郎たちの寝姿をつぶさに観察しながら彼らが目覚めるのを待った。
〈了〉
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