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34.双子 <平岩文人(ひらいわふみと)>

written by 朝川 椛


「あー、君が双子だったらなあ」

 ある日の夕方。
落ちていく陽の光を眺めながら呟くと、
洗濯物を畳んでいた由江が聞き咎めてきた。

「それはどういう意味?」

 少々怒気を孕んだその言葉尻に、文人は地雷を踏んでしまったことに気づく。

「いや、ほら、双子だったら絵のモデルをお願いしやすいだろう? 
1人で何時間も座ってるなんて疲れるだろうし」
「つまり、あなたは両手に花でウハウハしたい、と。そういうことね?」

 由江の目が据わっていく。文人は急いで本音を白状するしかなくなった。

「ち、違う違う。ただ俺の作風からして、その、血をさ、
血を分けてもらうことになるわけだし……」
「でも、双子って同時に生まれるけど別人なのよ? 
あなたは結局、私たち一族の血があればそれでいいってことなの?」
「それは違う! 俺は由江の血が欲しいんだから!」

 真剣に訴えかけると、由江が小さく吐息した。

「あなたって、時々迂闊よね」
「あ……」

 立ち上がり台所へ向かう恋人の後ろ姿を見送りながら、
文人は言い訳できない自分に愕然とした。

 由江が離れてしまったらどうしよう。
朝になって消えていたら、どうしよう。
不安が頭を支配していく。
どす黒く澱んだ闇に由江を引き込まぬようにしなければ。
 文人は唇を噛み締め、襲い来る感情の波に必死で抗う。
どうか穏やかな日常が続いていきますように、と願いながら。


                                     了
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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サークル『宿り木』の小説ブログです。
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と高木 一(たかぎはじめ)の
2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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