36.穴 <綾木涼(あやぎりょう)>
written by 朝川 椛
「和彦、お前靴下に穴が空いてるぞ」
「和彦、お前靴下に穴が空いてるぞ」
買ってきたプリンに夢中な甥っ子に声をかけると、
甥っ子が自身の足元を見た。
「あ、ホントだ」
小さく叫んで、慌てて足の指に力を入れ、穴を隠しにかかる。
「おいおい。それじゃあ、意味ないだろ」
「だって、そのまんまだと恥ずかしいし」
頬を膨らませ抗議してくる和彦の様子に、
涼はおかしさにくっくっと声を漏らした。
「笑うなよー」
さらに膨れる和彦の目を見つめ、涼はよし、と手を差しだした。
「俺が穴ふさいでやるよ」
「え?! おじさんそんな事できるの?!」
両目をこれ以上ないほど見開く和彦へ、涼は肩を竦めてみせた。
「まあ、これでも大人だからな」
「でもお父さんはできないよ? やらないし」
感心しきった和彦の言葉へ、涼は一瞬返答に困った。
「ま、まあ、不得意な人間もいるからな」
「ふうん」
和彦が小首をかしげながら穴の空いた手渡してくる。
「大人ってなんでもできるんだと思ってたよ」
「人間色々ってことさ」
感想を告げてくる和彦へ、涼は肩を竦めてみせる。
「そうなんだ」
どうやら納得したらしい。
またプリンをパクつきだす和彦を見ながら、涼は1人苦笑するのだった。
了
甥っ子が自身の足元を見た。
「あ、ホントだ」
小さく叫んで、慌てて足の指に力を入れ、穴を隠しにかかる。
「おいおい。それじゃあ、意味ないだろ」
「だって、そのまんまだと恥ずかしいし」
頬を膨らませ抗議してくる和彦の様子に、
涼はおかしさにくっくっと声を漏らした。
「笑うなよー」
さらに膨れる和彦の目を見つめ、涼はよし、と手を差しだした。
「俺が穴ふさいでやるよ」
「え?! おじさんそんな事できるの?!」
両目をこれ以上ないほど見開く和彦へ、涼は肩を竦めてみせた。
「まあ、これでも大人だからな」
「でもお父さんはできないよ? やらないし」
感心しきった和彦の言葉へ、涼は一瞬返答に困った。
「ま、まあ、不得意な人間もいるからな」
「ふうん」
和彦が小首をかしげながら穴の空いた手渡してくる。
「大人ってなんでもできるんだと思ってたよ」
「人間色々ってことさ」
感想を告げてくる和彦へ、涼は肩を竦めてみせる。
「そうなんだ」
どうやら納得したらしい。
またプリンをパクつきだす和彦を見ながら、涼は1人苦笑するのだった。
了
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