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37 ソーダ (千葉みさを)

written by 高木一

 妊婦になってからというもの体温調節がままならない。もうすぐ神無月だというのに、一人だけ夏の暑さがぶり返していた。みさをは団扇を扇ぎながらため息をつく。

(はぁ。ひんやりと冷えたアイスクリームソーダが飲みたい)

 みさをは口に含むとシュワシュワと弾ける甘いソーダ水の味を思い出し、ごくりとつばを飲み込んだ。

「久しぶりに飲みたいなぁ」
「何を?」

 無意識に声を出していたらしい。隣で本を読んでいた義利がきょとんとした顔を向けてきた。みさをはにかみながら答える。

「アイスクリームソーダ」
「あぁ覚えてるよ。ソーダ水を飲んだときのみさをの驚いた顔。あれは忘れられない」
「しょ、しょうがないじゃないですか。ソーダ水を飲んだはあれが初めてだったんですから」

 義利にからかわれ、みさをは恥ずかしさのあまり声を荒げた。

「可愛かったって話だよ。でもそっか、そういえば最近喫茶店とか行ってないね。久しぶりに行ってみる?」
「喫茶店へ行ってもアイスクリームソーダは頼めないからいいです」

 じっと見つめてくる義利に、みさをは首を左右へ振った。

「もしかして体調悪かった?」
「いいえ、調子はいいですよ。だけど、妊娠中は冷たいものとかは控えた方がいいんですって」
「そうなの? なんだかごめんな。俺も父親になるってのに、みさをばっかり大変な思いをさせちゃってるよな」

 義利がしゅんと肩を落とす。みさをは、夫の気遣いに胸をほっこりさせた。

〈了〉

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