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39.薬 <綾木龍彦(あやぎたつひこ)>

written by 朝川 椛

 龍彦は生まれてこの方倒れるほどの風邪をひいたことがない。
少し熱が出たとしても、
市販の薬を飲めばそれだけで次の日にはケロッとしているタイプだった。
だから、自分の息子が風邪を拗らせた時、
どうしてそんなに苦しむのかが理解できずにいた。

「薬も飲んだのになぜ良くならないんだ!」

 悪気はないまま怒鳴ると、妻が悲しげな顔をした。

「人間なら風邪くらいひきますよ」

 呆れたような言葉にはっとして息子を見遣ると、息子は項垂れていた。

「弱くってごめんなさい」

 咳混じりに謝罪してくる息子の視線を受け、
しまった、と臍を噛んだがもう遅く。
龍彦は落ち込む息子と非難げな妻の視線から避けるように、
部屋を後にした。


                              了
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テーマ : 小説
ジャンル : 小説・文学

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2人で100のお題をお借りし、
オリジナル小説を書いています。

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